第2回 自分との接点をCSRレポートで見つける

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積水ハウス株式会社 コーポレート・コミュニケーション部 CSR室長 広瀬 雄樹(ひろせ・ゆうき)

「CSR(企業の社会的責任)」に関心を寄せる就活学生が年々増えている。企業が発行するCSRレポートを読み込み、企業研究に活かしたり、自分のやりたいことや価値観とのマッチング度を図ったりしているようだ。

就職氷河期の再来で、2012年春卒業予定の学生にとっては厳しい船出が予想される。少ないチャンスの中で志望する企業から内定をもらうために、CSRレポートをどう活用すればいいのか。積水ハウスで18年人事畑を歩み、2010年からはCSR室長を務める広瀬雄樹氏に、そのあたりのことを聞いてみた。


CSRレポートはとても良い企業研究ツール

― 企業のCSRに注目して就活に取り入れる学生が増えています。

広瀬氏 企業にとって経済活動はもちろん重要ですが、今それだけでは評価されない時代になってきました。当社ではCSRの基本にサステナブルビジョンという考え方を掲げています。経済価値以外にも、いかに本業を通して社会や環境に良い影響を与えていくか。そういうことを本気で考えている企業が世の中から評価されて、長期にわたって存続していくのだと思います。

就活を始める上で大事なことは、自分の価値観、職業観について考えることです。例えば、10年会社で頑張って社会勉強して、独立起業したいと考えている人もいれば、できるだけいい会社に入って長く勤めたいという人もいるでしょう。いずれにしても会社と自分の価値観がマッチングしていれば充実した生活を送ることができます。そして、そのような情報を入手することができるのがCSRレポートではないでしょうか。

※ 積水ハウスでは「環境」、「経済」、「社会」、「住まい手」という4つの価値のバランスのとれた経営を目指し、これを具体化した13の指針によって、持続可能な企業活動を目指している。

― では、学生はCSRレポートのどこをポイントに読めばいいですか。

広瀬氏 CSRレポートで取り上げられている内容が非常に幅広い中で、誌面のどのあたりに着目するのかということは、最終的には学生さん自身が判断するのが正しいことですし、それが自分の就活につながっていくはずです。いろいろな会社の情報に触れて、見比べて、目を肥やして、CSRレポートの目利きになってほしいですね。そういう意味では、CSRレポートはとても良い企業研究のツールではないかと思います。


CSRの根底にある考えを読み取ってほしい

― 貴社では会社説明会や、筆記試験、面接などの各プロセスでCSRレポートをどう活用していますか。

広瀬氏 当社のCSRレポートはホームページからダウンロードできますし、冊子もレポート請求サイトから取り寄せられますので、会社説明会ではそうしたアナウンスをしています。また、CSRレポートの誌面には当社の重要な取り組みが網羅されていますので、会社の考え方や方向性などを説明する際には、この中から話題を拾って話をしています。一方、筆記試験で会社の業務知識や会社理解を問うような問題は出していません。ただ、面接では「当社の事業活動で知っていることをお話してください」といった、少し広い範疇での質問はしています。

― 貴社のCSRについて、学生からの質問や意見も多いと聞いています。

広瀬氏 そうですね。当社の環境配慮型住宅グリーンファーストや「5本の樹」計画など、地球温暖化や生物多様性に関する取り組みについて良く勉強してきて、「自分は読んでるぞ」ということで細かい部分の質問をしてくる学生さんがいます。でも、そうしたアピールで私はいいと思います。本当に自分が就職したい企業であれば、そうした熱心な姿勢は決してマイナスにはなりません。ただ、CSRの表面的な取り組みだけを覚えて質問するというよりも、その根底に流れている会社の考えや経営哲学を読み取ってほしいと期待しています。


何度も何度も読み返すことがいい結果を生む

― では最後に就活中の学生にアドバイスをお願いします。

広瀬氏 企業の採用担当者が選考を行う際の着眼ポイントは大きく二つあると思います。一つは過去どのような生き方をしてきたのかということ。これは、学生時代を含めたこれまでの人生の過ごし方は、会社に入ってからもある程度はリピートされる可能性が高いと考えているからです。

もう1つは志望動機です。会社生活は長いですから、コツコツと働き続けるにはモチベーションの維持が重要になります。それには、志望動機がきちんと自分の生き方や価値観にマッチングしているかが重要です。どんなことを考えて学生生活を送ってきたのか。何に興味があり、その会社に入ったら何をやりたいのか。これらの点を明確に整理しておいてください。

― しっかりとした自己分析とCSRレポートの精読が内定への近道でしょうか。

広瀬氏 CSRレポートをめくっていると、企業の取り組みと自分が過去経験してきたこととの間にいくつかの接点が見つかるかもしれません。ぜひ、それを発見してもらいたいのです。もちろん、それは企業にとって一つの側面に過ぎません。ただ、例えば面接で「入社後にキャリアを積んで、最終的にその接点――志望する事業活動に携わるチャンスが与えられればうれしいです」というような話ができれば、採用担当者の心をつかむことができると思います。

志望度が高い企業のCSRレポートは何度も何度も読み返して、そういう接点が自分の中で腑に落ちた状態であれば、きっといい結果が出るのではないでしょうか。

広瀬氏写真

Profile:広瀬 雄樹(ひろせ・ゆうき)
1961年、神戸市生まれ。1984年、積水ハウス株式会社入社。住宅営業職を経て人事部で人材育成、採用を18年間担当。キャリアコンサルタントの資格を持ち、多くの学生の就職活動に関わってきた。現在はCSR室長として環境、コンプライアンス、社会貢献等幅広い分野に取り組んでいる。

所属・役職は、2010年9月時点のものです。

Data:積水ハウス株式会社「Sustainability Report 2010」
http://www.sekisuihouse.co.jp/sustainable/2010/
積水ハウスグループがサステナブル社会の実現に向けて、2009年に掲げた環境・CSRに関するコミットメントについての取り組みを詳しく紹介しています。

特に、住宅・建設業界初の「エコ・ファースト企業」として、当社グループが積極的に推進している地球温暖化対策や生態系保全、資源循環、住宅の長寿命化やまちづくりなどの取り組みとそれらの進捗状況について、実例や具体的な数値データ、お客様や社外有識者の声を交えてわかりやすく説明しています。

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