第3回 企業の実態を知るにはCSRレポートが効果的

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株式会社カネカ CSR委員会事務局長 堀内 泰治 氏

就活に臨む学生たちの間で、「CSR(企業の社会的責任)」に取り組む企業に注目が集まっている。世の中に対して良い影響を与え、長期にわたって存続できるのはどのような企業なのか。志望する企業のCSRレポートを読み込んで、企業の実態を把握することは当たり前になりつつあるようだ。

折からの不況と震災の影響で企業の採用者数は減少すると予想される中、内定獲得のためにCSRレポートをどのように活用すればいいのか。カネカで17年間、人事・勤労業務を担当し、2009年からCSR委員会事務局長を務める堀内泰治氏に、CSRの本質や理解するためのポイントを聞いてみた。


企業の使命は「本業での社会貢献」

― CSRとは具体的に何を指すのか分からないという学生が少なくありません。端的にCSRとは何でしょうか。

堀内氏 CSRとは「本業を通じて社会に貢献すること」だと私は考えています。学生さんの中には、CSRイコール社会貢献活動と解釈し、ボランティア活動や寄付行為がCSRだと理解している方もおられます。これらはもちろん大切なことですしCSRの中に含まれることですが、企業が持続的に果たしていく使命はあくまで「本業を通じた社会貢献」なのだと思います。

― 御社のようなBtoB企業の場合、その「本業を通じた社会貢献」が少し分かりにくい面もあります。

堀内氏 BtoB企業は、一般の消費者からすると少し地味な存在ですが、日本の技術力を下支えしているのはBtoB企業です。カネカグループは、総合化学メーカーとして衣・食・住・医にわたる広い分野で事業活動を展開していますが、例えば、家庭用ビデオカメラの小型化は、当社の超耐熱性の高機能性フィルム「ポリイミドフィルム」の開発があったから実現しました。最近では、タブレット型PCやスマートフォンの進化にも一役買っています。

CSRレポートでは、こうした本業での社会貢献をいかに分かりやすく紹介するか、各企業が工夫しているところです。当社も読み物風の3つの特集を取り上げていますので、ぜひ注目して見ていただければと思います。

※ BtoB:企業間取引のこと。企業と一般消費者の取引はBtoCという


CSRの本質はディスクロージャー

― 広報室長も兼務するお立場ですが、「カネカのCSR」を伝える際に大切にしていることはありますか。

堀内氏 CSRの本質はディスクロージャー、つまり、いかに会社の活動を公開していくかだと考えています。そこで私は、部下に対して「ものづくりの会社として、社会に役立つものを作っているという”誇り”を持って仕事をしよう」と話をしています。我々は素材をつくっている企業なので、その製品そのものが前面に出ることはあまりないのですが、「この自動車のこの部品は私が作ったプラスチックでできているんだ」といった熱い想いとそれを世の中に伝えていくディスクローズが重要であると考えています。

ですから、CSR委員会事務局では、社員が自分の仕事が世の中にどう役立っているのかを実感できるように、事業活動と社会との関わりを分かりやすくまとめてイントラネットで発信したり、社外のステークホルダーには、CSRレポートなどの定期刊行物で紹介したりしています。また、兼務している広報関係では、月4回以上ニュース発信することをメンバーに目標化させるなどしています。

※ ディスクロージャー(Disclosure):経営内容などの情報開示のこと

― 広報室で発行している「会社案内」などの媒体とCSRレポートの違いは何でしょうか。

堀内氏 カネカでは、「会社案内」とそのダイジェスト版である「Corporate Profile」を出していますが、これらは基本的に製品と経営に関する数字を紹介することに主眼を置いています。一方、CSRレポートは、会社の実態を知っていただくためのさまざまな情報を載せていますので、学生さんが企業のことを知るには一番効果的な媒体だと思います。


CSRレポートで早めの企業研究を

― では、CSRレポートを読むときのポイントを教えてください。

堀内氏 企業によって考え方は違いますが、当社のレポートでは、ぜひ「トップコミットメント」と「特集」に注目していただければと考えています。トップコミットメントは、2009年に策定した長期ビジョンや中期計画を実現していくための方針・体制など、会社の方向性について社長自らの言葉で語っています。一方、特集は、「お客様」「環境」「地域・社会」の各ステークホルダーと、当社グループの関係性を詳しく紹介しています。特に今回は、各ステークホルダーの代表として3人の方のメッセージを掲載していますので、こちらも読んでみてください。

― 就活中の学生にメッセージをお願いします。

堀内氏 ビジネスマンにとって最も重要なことはコミュニケーション力だと私は考えています。CSRを推進させるためには、さまざまなステークホルダーとの対話が不可欠です。苦しい状況になったとき、それを乗り越えるにはこの力が必要になります。そこで、一度これまでの人生でチャレンジしたことを振り返っていただき、ハードな状況を乗り越えるために周囲の人とどうコミュニケーションしてきたのかを整理しておいていただくと良いのではないでしょうか。

また、企業研究はできるだけ早い段階からしておくことをお勧めします。特に就活の初期段階では、一般的に知名度の高いBtoC企業が選ばれる傾向が強いですが、BtoB企業も含めた広い視野で企業を選択するようにしてください。冒頭で申し上げたとおり、BtoB企業が社会に対してどのように貢献しているのかは、CSRレポートを読めば理解できると思います。

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Profile:堀内 泰治(ほりうち・やすはる)
1953年、大阪府生まれ。1977年、株式会社カネカ入社。食品事業の営業職を経て、人事・勤労業務を17年間担当。同業務を通じて、多くの学生の就職活動にも関わってきた。現在は広報室長とCSR委員会事務局長を兼務担当。BtoB企業としての企業ブランディングとCSRの推進に取り組んでいる。

インタビュー日時:2011年9月22日(所属・役職は、インタビュー当時のものです。)

Data:株式会社カネカ「カネカCSRレポート2011」(http://www.kaneka.co.jp/csr/
2011年版は、ダイジェスト版とPDF版に分けて発行しました。ダイジェスト版は、はじめてカネカに接する方やCSRの概要を知りたい方のために内容を簡潔にまとめ、冊子として発行するとともに、PDF版はすべての開示情報を掲載しています。

また、特集ではカネカグループのCSR活動について、ビジネス活動関連とステークホルダーの関心の側面から重要性の高い項目を紹介しています。

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